【洒落怖】百物語・三十三本目 「戸を開けるな」 :百物語2013本スレ

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110 :代理投稿 ◆YJf7AjT32aOX:2013/08/24(土) 00:52:04.02 ID:hqzLBEKk0

【第三十三話】 キツネ ◆8yYI5eodys 様 「戸を開けるな」

(1/4)
幼い頃に祖父の家に泊まりに行くと、祖父は毎夜、

「夜中に戸を開けたらいかん」

そう言って床に着いたものでございました。
一度、従兄弟たちと夜中に家を抜け出そうとした時などはどえらい怒られたもんです。
普段は温厚な祖父でしたが、この時ばかりは鬼のような形相で怒鳴られたのを覚えております。
あまりにもしつこく言われるので、ある晩酔っ払った祖父になんで玄関の戸を開けちゃいけないのか訊いてみたところ、

「夜中に玄関を開けるとムカデが来る」

「ムカデが来て山に引き摺りこむ」

そう言ったっきり黙り込んだ祖父は、心なしか青褪めた顔で再び焼酎の入ったコップを傾け始めました。
この話を聞く数日前にムカデに咬まれ、足をパンパンに腫らしていたことも相まって恐怖したものでございました。
そんな祖父が倒れて病床に着いたのは数年前。
当時、他県に住んでいた私は数度しか見舞いに行けませんでしたが、その度に、

「玄関の戸は閉まっとるか」

「夜中に誰も入れてないか」

と、自分の病状よりも自宅の戸締りについて心配しておりました。
後に訊いた話では、他の親戚が見舞った際にもしきりに同じことを言っていたとか。

引用元: https://toro.5ch.net/test/read.cgi/occult/1377258497/

111 :代理投稿 ◆YJf7AjT32aOX:2013/08/24(土) 00:53:01.92 ID:hqzLBEKk0

(2/4)
私は祖父の最期を看取ることができませんでしたが、亡くなる間際も

「夜中に絶対に玄関を開けちゃいかん」

息も絶え絶えにそう言っておったそうでございます。

その祖父の通夜は祖父の自宅で営まれました。
夕刻には親族が集まって参りました。
大人たちは祖父の思い出を語りながら酒を酌み交わし、幼い従兄弟や甥っ子、姪っ子たちは無邪気に遊びに興じ。
夜が更けるにつれて話題は身内の誰彼がどうしたといった近況に遷り。
深夜を回る頃には話題も尽きたのか、皆静かに、時折ぼそぼそと話すといった具合でございました。

ちょうど深夜。
確か、座敷の古びた柱時計がボーン……ボーン……と不気味に響いていた頃合い。
ふと、庭先から物音が響いて参りました。

ざざっ……ズズズ、ざざっ……ズズズ

と、庭の砂利を引き摺るような物音が。
その音に気付いたのか、親族の何人かがきょろきょろとと見回し。
叔父の1人、入り婿だった叔父が「お義父さんが帰って来た」と呟き立ち上がりました。
亡くなる前、祖父は半身麻痺で不自由な足を引き摺って歩いておりました。
その祖父が庭先を歩く姿を思い浮かべたのでございましょう。
そのまま座敷の障子を開けて玄関に近付いて行きます。

ざざざざっ!……ズズズズズ!ざざざざっ!!

庭先の引き摺りまわるような音も玄関に近付いて参りました。

112 :代理投稿 ◆UiIW3kGSB.:2013/08/24(土) 01:00:25.53 ID:8Pjhrnqs0

(3/4)
そのまま叔父が玄関の戸を開こうとした時でした。
ダメッ!!と幼い従妹が玄関を開けさせまいと戸を押えました。
それに続くかのように親戚が開けちゃいかん、と口々に叔父を非難します。
祖父の言いつけを思い出したのか、はたまた祖父が入院している頃から祖父の家で好き勝手にしていた叔父への非難からか。
そんな親戚たちの様子に口元をひきつらせながら、

「あれはお義父さんだ!家に入れてあげないと可愛そうじゃないか!」

と吐き捨てた叔父は従妹を乱暴に押し退け、ガラガラガラ、と玄関の戸を開け放ったのでございます。
……絶対に開けるな、と言われていた戸を。
その瞬間でした。

まず始めに従兄の抱いていた赤ちゃんが泣き喚き。
びたん!びたんびたんびたんびたん!!と、何かが座敷のあちこちを跳ね回る音が響き。
そして、何かが座敷の畳や壁を引っ掻きまわるような音がし。

気付けば、叔父がお座敷の奥に尻もちをつき、呆然としておりました。
なぜかつい先刻まで玄関先にいたはずの叔父が。

後で聞いた話では、
ある親戚は、叔父が見えない何かに引き倒されたのを見た、だとか。
また別の親戚は、叔父の両足に何かに掴まれたような鬱血の跡があった、とか。
そして……玄関を開けまいとしていた従妹が言うには。
玄関から沢山の人、それも何十人もの≪黒い人≫が連なって入って来たのを見たのだそうです。
後ろの者が前の者の足にしがみ付き、その者がまた前の者の足にしがみ付き。
老若男女、痩せこけた者や血塗れの者、顔が潰れた者が連なって這い回っているのを見た、と。

そして最後に従妹が言った言葉が印象的でした。

「―――まるでムカデみたいだったの。あれ」

113 :代理投稿 ◆UiIW3kGSB.:2013/08/24(土) 01:02:15.00 ID:8Pjhrnqs0

(4/4)
そんな事があっても祖父の葬儀は無事に終わり。
叔父が祖父の跡目を継ぎ。
叔父が祖父の家に住み続けていたある日。

今度は叔父が亡くなったと聞かされました。
近くの山で亡くなっていたのを近所の爺さまが見つけたそうでございます。
そして。
発見された時には叔父の身体を何十匹ものムカデが這い回っていたのだそうです。

叔父はいったい何を家の中に引き入れてしまったのでしょうか?
もしそれが祖父の言った≪ムカデ≫だったとしたら……
叔父はムカデに山に引き込まれた、という事なのでございましょうか?

よく、通夜や葬儀の晩に故人が帰ってきて足音や畳を引っ掻くような音が聞こえた、という怪談話があります。
それは本当に亡くなった故人なのでしょうか?
はたまた別の『何か』なのでございましょうか?

この話を読んでいる皆様、外から物音が聞こえても気軽に戸を開けない方がよろしいかと。
迂闊に開けると……何かを招き入れてしまうかもしれませんから。

【了】

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