かぐら ◆Ccp.OZqu04w2 様 『七夕祭りの噂』
母親の実家のある山深い村落で、毎年夏祭りがある。
幕末から百数十年続くもので、毎年決まって梅雨の時期に開催されることもあって、
宵祭りか本祭り2日間のうちどちらかに必ず雨が降る。
この祭典は昔から陰で、誰が言い始めたものか、
――雨の降らない年は、奇怪なことが起こる。
とされてきた。
母が言うには、そうささやかれたことにはきっかけがあったのだそうだ。
実はこの数十年の間に、当日雨の降らなかった年が一度だけあり、痛ましい事故が発生した。
祭典当日、山車を引っ張っていた青年部の一人が、車輪にひかれて亡くなった。
後にも先にも山車の周りで事故があったのは、このときをおいて他になかった。
若い屈強な男ばかりで、事前に十分な訓練も積んでいるし、こんなことはあり得ない。
内臓破裂で、周囲が駆け寄ったときにはもうどうしようもなかった。おかしなことに近くで目撃した人々の話では、
「綱をもっと引け」
という皆の怒号に逆らうように、迫ってくる山車に向かってよろよろと自らの体を滑り込ませたのだという。
それからしばらくして、年が変わらないうちに、交通事故が起こった。
現在でも運行されているが、母の実家のすぐ脇の高台に電車が通っている。
ここで男性が線路に首を預けて寝転がり、自殺を図った。
どういうわけか、列車の鉄車輪は、首をはねずに鎖骨の下を引きちぎった。
当時子供だった母の友人が、騒然となった現場を通りかかり、その様子を母に伝えに駆けてきたのだそうだ。
不幸なことに男は辛うじて息があり、その咽喉が生きているばかりに、
「のどがかわいた。水をくれ、水をくれ」
と、うめくように肉塊が声を振り絞っていたという。
私はこの話を初めて聞いたとき、作り話ではないかと笑ったが、
母は、そのときの友人の、何ともいえないやるせない青白い顔が、今でも忘れられないそうだ。
【了】
引用元: ・【8月18日】百物語本スレ【怪宴】
二十三本目の蝋燭が消えました・・・
かぐら ◆Ccp.OZqu04w2さん、ありがとうございました
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はんぶん ◆hNCx62prg6さん、第二十四話をお願いします
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