雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 『夜警』
後輩の話。
大学生の時分、彼は警備会社でバイトをしていた。
夜警を任されていた中に「出る」と噂があるビルがあったのだという。
見掛けこそ強面する大男の彼だが、根はかなりの臆病者で、
そこの仕事が廻ってくる度にビクビクしながら仕事をしていたそうだ。
そんなある夜、例によって泣きそうになりながら、定時の見回りをしていると。
懐中電灯の照らす光の中に、女が一人姿を現した。
どこか野暮ったい、古い型の白いワンピース。
身体を患ってでもいるのか、顔色は青白い。
「えっどこから出てきたの!?」
突然のことに硬直する彼を目にして、女も驚いた様子だ。
しばらく見合ってしまったが、徐々に女は恐怖の表情を浮かべ始めた。
「いや僕はバイトでして、そのつまり・・・」
慌てて、自分は怪しい者ではないとの説明を始めたが、噛みまくってどもりまくる。
端から見たら怪しいことこの上ない。
「ヒィッ!」
いきなり女は短い悲鳴を上げ――
そのままスゥッと透き通るように消えてしまった。
「・・・怖いのは怖かったけど、でもそれより切なかったですよ。
僕、そんなに怖い顔してますかねぇ?」
後輩はそう言いながら、ゆっくり頬を撫でていた。
・・・まぁ確かに、彼は熊みたいな顔をしていたが。
その後も何度かそこで仕事をしたが、あの女性は二度と姿を現さなかったそうだ。
【了】
引用元: ・【8月18日】百物語本スレ【怪宴】
十五本目の蝋燭が消えました・・・
雷鳥一号◆zE.wmw4nYQさん、ありがとうございました
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何でも◆3/OAb1.6.2さん、第十六話をお願いします
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