【第六十一話】天狗のご加護
怖い話の途中ですが、ここで僕の最も温かかった不思議体験を。
これは、この4月、友人と3人で京都に行ったときのお話。
このときのメインは義経が幼少期を過ごしたことでおなじみの鞍馬山。
道中に観ていたDVDのおかげで、異様なテンションでの入山でした。
とりあえず車を止め、山道をひた登る。
高いヒールでやってきた友人2人はかなりキツそうでした。
本堂へたどり着き、お参りをすませて下山…
っと思ったところである看板を発見しました。
「奥の院→」
いつものテンションならきっと行かなかったでしょう。
しかしこのときの僕たちの答えは
「GO!!!」
…完全に気が狂っていたと思います。
しかし、そんな勢いも、5分後には後悔の嵐へと変わりました。
鞍馬の奥の院への道は、そのまま貴船神社へとつながる参道で、
当たり前ですが舗装なんて全くない山道です。
ヒールの2人も辛そうでしたが、スニーカーの僕でさえ途中脚を捻るほどでした。
引用元: https://toro.5ch.net/test/read.cgi/occult/1377258497/
すみません。
(2/2)
腫れた様子はありませんでしたが、歩く度に痛みは増します。
なんとか聖域である不動堂までたどり着き、お参りを済ませ、
さらに貴船神社の方へと向かいます。
不思議な現象が襲ったのはそんなときでした。
その山道は、木が深く生い茂っており、春の陽気も届かなくて寒いくらいだったのですが、
何故かだんだんと背中だけが温かくなってきたのです。
まるで、誰かが背中から包んでくれているかのように。
それと同時に、あんなに痛みを発していた足首も痛くなくなりました。
そうなって初めて、僕は自分の目の端々に、黒い影がちらちらしていることに気付いたのです。
そんな時、少し後ろに居た友人から声がかかりました。
「ねぇ、私の後ろ、誰か居ない??」
どうやら彼女も同じ体験をしていたようです。
その後どんどん疲れていく筈の体は軽くなり、無事貴船神社までたどり着くことができました。
あの影が本当は何者なのかはわかりません。
ただ、私たちの中では「天狗が守ってくれたのだろう」
と思っております。
今度秋に鞍馬へ行く予定ですが、その際はお礼に天狗の好きな光り物を持ってお邪魔しようと思っております。
もちろん、友人にヒールは履かせません。
[了]
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