【第四十八話】 ヤプール ◆v0h8dExI/ytY 様 『一夜限りの守護霊』
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今までで一番命の危機を感じた話。
私の家は昔農家をやっていて、その時使っていた倉庫をとある会社に貸していた。
4年ほど前、この倉庫で事件が起こった。
その倉庫を借りていた会社は、まぁ従業員は全部で4人しかいないのだが、だいたい6時頃には仕事を終えているのが普通だった。
しかしその日は、9時頃に自分が倉庫の前を通った時にも電気がついていた。
「電気の消し忘れかな?」と思い、合鍵を持って倉庫に入ると、中では一人の従業員が重そうな荷物を抱えていた。
なんでも掃除をしていたのだとか。
こんな時間にひとりで掃除?と少し不思議に思ったものの、「ちゃんと後始末しておいてくださいね」とだけ伝えて家に戻った。
その日の夜、時間にして0時半くらいだったと思う。
ふと目を覚まし、何かの気配を感じて窓際のカーテンを見るとかすかに揺れた気がした。
窓は締め切ってエアコンもつけていないのに。
そして正面を向いた瞬間、明らかに生気を失った顔をした長身の女性と目があった。
服が現代的なことを除けばいかにもな幽霊。
女性はこちらを見下すように睨みつけており、私は恐怖で体が動かなかった。
金縛りだ。頭のてっぺんから指の先までピクリとも動けなくなってしまった。
引用元: https://toro.5ch.net/test/read.cgi/occult/1377258497/
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すると今度は、廊下の方から足音が聞こえてきた。
ギシ…ギシと、ゆっくり、だが確実にこちらに何者かが迫ってくる。
そして私の部屋の前で立ち止まり、ゆっくりと扉を開けた。
が、扉はすぐにしまってしまい。今度はやや足早に去っていく足音が聞こえた。
気づけば金縛りも消え去り、あの女性もいなくなっていた。
一体なんだったのかと思いつつも、とりあえず身の安全が確保できたことに安堵し、その日はそのまま寝た。
翌日、仕事から帰ってきた私は倉庫の周りに警察が集まっているのを目にした。
なんと、あの倉庫の中で、死体が見つかったそうだ。
そして容疑者として捕まったのが、あの時倉庫に残っていた従業員。
じゃああの時の荷物は…なんて考えていると、警察の人が
「なんでも昨日、あなたの家にも侵入したそうですが、何かお気づきになりましたか?」
と聞いてきた。
そう、あの夜聞いた足音の主はあの従業員だったのだ。
死体を隠す現場を見られたと思い、私を「後始末」しに…?
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では、なぜ彼は私の部屋の前まで来て引き返してしまったのだろうか?
警察いわく、今朝早く自首しに来たらしいが、ひどく怯えていてしばらくまともに話せなかったとのこと。
おそらく、彼も見てしまったのだろう。あの夜私が見た女性の幽霊を。
いや、見ただけならまだマシか。最悪の場合は…。
翌朝、新聞で見た被害者の顔は、あの夜見た幽霊に瓜二つだった。
終
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