【第三十五話】 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 様 『ケラケラさん』
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知り合いの話。
彼女が小学生の頃、河川敷で仔犬を拾った。
残念ながら家で飼ってはくれなかったので、橋の下に毛布を入れた段ボール箱を置き、
そこでこっそり面倒を見ることにした。
放課後になると、給食の残り等を持参して世話をしていた。
仔犬の方も、彼女にとても懐いていたという。
そんなある日、いつものように河原で犬と遊んでいると、声が掛けられた。
「まああ、本当に可愛いワンちゃんだわぁ」
吃驚して顔を上げると、知らない小母さんがニコニコとしながらこちらを見ていた。
「ねぇ、この仔ってあなたの犬なの?」
そう話を続けながら側まで寄ってくる。
「そうしたいけど、そうじゃないんです。
飼っちゃいけないってお母さんに言われたから……」
そう返答すると、小母さんはおかしなことを言い出した。
「そっかぁ、見ていない間、ワンちゃんのこと心配だもんね。
よし、オバちゃんがその心配を無くしてあげよう!」
引用元: https://toro.5ch.net/test/read.cgi/occult/1377258497/
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何を言っているんだろうと首を傾げていると、小母さんは仔犬を指差して、
甲高い声で頭を前後に振りながら笑い始めた。
ケラケラケラケラ……
楽しくて仕方がないという表情なのに、その目だけが全然笑っていない。
小母さんはそんな怖い顔をしながら、少しも途切れず笑い続ける。
薄気味悪くなって逃げ出そうかと、彼女が考えた矢先。
突然、足元の犬がぶっ倒れた。
ひどく痙攣をしたかと思うと、そのまま泡を吹いて動かなくなる。
慌てて手を伸ばしたが、仔犬は既に死んでいた。
「良かったねぇ! これで心配することなんか無くなっちゃったよ!」
小母さんはそう言うと、鼻歌を歌いながらどこかへ去って行った。
彼女はしばらくの間、そこで立ち竦んでいたそうだ。
後で友達に聞いた話では、件の小母さんはその地域ではかなりの有名人で、
「死神ババア」とか「ケラケラさん」などと呼ばれて恐れられていたらしい。
指差してケラケラと笑うことで、小さな動物をよく死なせていたという。
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小母さんはその後、大きなペットショップの中でとある騒ぎを起こし、
それきり姿が見えなくなった。
遠方の親類に引き取られたとも、病院へ入れられたとも噂されたが、
真相はわからない。
知り合いはその時の光景がトラウマになったそうで、犬を飼うということが
出来なくなった。
「飼いたいんだけどね。
でもどんな犬でも、その死んだ姿が頭に浮かんできちゃって」
そう言う彼女は本当に寂しそうに見えた。
【了】
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