【第三十四話】ヨサック◆skAMDOCpdQ『オシラサマ』
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曾祖母の実家では昔、オシラサマを祀っていたそうだ。
曾祖母がまだ幼い頃、この家の息子(曾祖母の兄)が日露戦争に召集され、家族皆でオシラサマに「息子を守って下さい」とお願いした。
息子が出征してから間もなくのある晩。家族で居間にいると、廊下の方から音がする。
コトリ、ちりん。コトリ、ちりん。
何事かと様子を見に行くと、廊下側の障子に月明かりで影が映っている。
小さな二つの影。
それが玄関の方へ少しずつ移動しており、動く度に音が鳴るようだ。
オシラサマの御神体は、桑の木に幾重にも着物を着せてあり、鈴が付いている。そして二体一対だ。
「これはオシラサマが息子を守って下さりに出掛けるのでは」
家族皆で障子の影に手を合わせたという。
息子の出征中、その様な事が度々あったそうだ。
引用元: https://toro.5ch.net/test/read.cgi/occult/1377258497/
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やがて戦争が終わり、息子は無事に帰って来た。
息子の話によると、戦場は203高地だった。日露戦争最大の激戦地として有名になる場所で、息子も何度も死を覚悟したという。
ところが「これは絶対に当たった!」と思う様な軌道の弾丸も、何故か当たらない。周りの戦友が次々と倒れる中、自分の体だけ弾が避けて行く様だった。
そして、そんな時には必ず鈴の音が聞こえたそうだ。砲弾の雨の中不思議な程鮮明にちりん、ちりん、と。
あぁオシラサマだ、と息子は思ったという。
その話を聞いた家族は何とありがたい事だ、とオシラサマに手を合わせた。
しかし、よく見るとオシラサマの様子がおかしい。
神棚から御神体を下ろしてみると、幾重にもなったオシラサマの着物全てに、焼いた鉄串で刺した様な小さい焦げ穴が、無数に開いていたそうだ。
【終】
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