【第二十八話】切子 ◆DjSl2E7hcs様『山のお祭り』
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私がぜんぜん覚えていなかった話。
私が中学生のときに、母方の祖母が亡くなりました。
そのとき私は初めて田舎の祖母の家に行きました。
祖母の家は関東にしては相当な田舎で、田んぼや丘(山というほどではない)に囲まれた場所でした。
暑い夏の盛りで、学校の制服がひどく蒸れたのを覚えています。
それまでは一度も祖母の家には行ったことがなく、盆や暮れにも母だけが祖母の家に帰っていました。
私と三つ下の妹、それと父は留守番をしていたのです。
ですから、最近までずっと父と祖母があまり仲がよくなかったのだろう、などど漠然と思っていたのでした。
今年、祖母の法要があり、ふとそのことを母に話してみました。
すると母は少し意外そうな顔をして、それからこの話をしてくれました。
引用元: https://toro.5ch.net/test/read.cgi/occult/1377258497/
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私が幼稚園に通っていた頃、実は私達一家はそろってお盆に祖母の家に行ったことがあったそうです。
まあ、私はぜんぜん覚えていなかったのですが。
そのときのことなのですが、母が妹を昼寝させているところに私がやってきて言ったそうです。
「お祭りにいきたい」と。
そんなのどこでやってるの、と母が聞き返すと、私は母を外に連れ出して少し離れた丘の一点を指差したそうです。
母が見た限りそこで祭りらしいものをやっている気配はなく、ただ森があるだけでした。
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それでも執拗にせがむ私に、そんなのどこにもないわよと言うと、私は事細かに様子を説明しだしたそうです。
どんな人がいるのか。
どんな様子なのか。
まるで実際にそこでなにかお祭りを見ているかのように。
なんだか薄ら寒いものを感じた母は、私を連れて祖母にそのことを話しに行ったそうです。
すると祖母は驚いた顔をした後、少し考えてから言ったそうです。
この子はここにつれてきてはいけないかもしれないねえ、と。
そんなわけで、その後は私を連れて祖母の家に行くことはなくなったのだそうです。
それだけで、なぜ私を連れてきてはいけないのかまでは母も知らないということでした。
また、その場所になにかしらいわくがあるとか、お寺や神社、お墓などがあるというような話もないそうです。
そもそも母もそこで育ったわけですから、おそらく何もないのは間違いないのでしょう。
だいたいあんたは昔から物覚えが悪いから・・・と、母と、一緒に聞いていた妹には笑われました。
ぜんぜん覚えてなかったのが悪いんだけど。
(了)
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