【第二十七話】成 ◆0ute.wyqdY様 『おとうさん』
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中学の頃からの親友が結婚したときのゴタゴタの話
彼女の父親は、彼女がまだ小学校に上がる前に亡くなった
ということになっていた
というのも、彼女はそれが母親の嘘だと知っていたのだ
そもそもお墓も仏壇も位牌の類いもなく、それらがないのは父実家との不仲のせいという話自体、
聞くばかりの私にしても嘘臭く思える
年に一度、父親は彼女に会いに来たそうだ
8月の暑い盛り、彼女の誕生日に
決まって母親のいないとき、近所の公園でのこと
いつも、内緒だと微笑みながら頭を撫でてくれたという
プレゼントだとかお小遣いだとか、そういうものはなかったそうだけど、
普段写真でしか父親の姿を見ることのなかった彼女にとっては一年に一度だけの楽しみだった
結婚が決まったとき、勇気を出して彼女は母親に聞いたという
「ねえ、お父さんの住所教えて?」
母親は呆気にとられたように彼女を見つめたそうだ
「お父さんは死んじゃったのよ?何で今さらそんなこと言うの」
少ししてからそう言った母親に、彼女はひどく苛立った
もういい、とだけ言って、彼女は実家を飛び出した
それが結婚式の一年前の話
引用元: https://toro.5ch.net/test/read.cgi/occult/1377258497/
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その次の誕生日、彼女は近所の公園で父親を待った
いつものように現れた父親に、結婚の話をする。
父親はとても驚いて、でもとても喜んでくれて
だけど少し寂しそうに見えた
「お母さんったら酷いのよ?お父さんは死んじゃった、なんて」
子供のように膨れる彼女を父親は苦笑しながら撫でたそうだ
「……ごめんな」
ぽつりと呟いて、式には出られない、と父親は続けた
理由を聞いてもはぐらかされ、父親はそのまま去っていったそうだ
追いかけてみても、公園を出てすぐに見失ってしまったらしい
彼女には、母親が嫌がるからだとしか思えなかった
だから余計に母親へ反発する気持ちが強まってしまった
母親に相談せずに父親の住所を調べようとした彼女は、戸籍を取り寄せた
そこに書かれていたのは、変わらず筆頭者となっている父親の名前
そして、17年前に死亡したという事実だった
以来、誕生日が来ても彼女が父親に会うことはなかったそうだ
【了】
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