【第二十話】 ヤプール ◆v0h8dExI/ytY 様 『自称霊感のない兄』
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私の実家は、隣に墓場があり、周りは竹やぶに囲まれた、霊体験するにはうってつけの場所にある。
実際私も何度かそういった体験はしているのだが、私の兄は「自称」霊感がないらしく、
一度もそういった体験はしていない、と言い切っている。
なぜ「自称」かというと、私はこの兄と一緒に霊体験をしているからだ。
中学生の頃、私たちは二人で一つの部屋を使っていた。
夏休みのある日、兄は受験勉強、自分はゲームに熱中し時刻は既に午前1時を回っていた。
そろそろ寝るか、と電気を消して目をつぶると、何やらカタカタと音がする。
音のする方に目を向けると、机に取り付けてあるスタンドライトが揺れていた。
地震などではない、周りのものは一切揺れておらず、体も揺れを感じていない。
兄も異変に気付き、「なぁ、これって…ポルターガイストってやつ?」と震えた声で言った。
しばらくすると揺れは止んだが、また眠ろうとするとカタカタと揺れ始めた。
気になって仕方がなかった兄は、スタンドライトを動かないように固定してしまった。
すると今度は、棚に陳列してあったフィギュアがいっせいに揺れだして崩れ落ち、
さらには部屋の隅に置かれた水槽は水も溢れんばかりに激しく揺れだした。
揺れは更に、本棚へ、洋服ダンスへと伝染していく。
しかしやはり、地面は一切揺れていない。
引用元: https://toro.5ch.net/test/read.cgi/occult/1377258497/
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我々が恐怖のあまり固まっているうちに、しばらくして揺れは収まった。
一応テレビをつけて地震速報を確認したが、しばらく待っても流れなかった。
この時の兄は初めての霊体験に若干興奮気味だったが、ひとしきり片づけをしたあとはすぐに寝てしまった。
私は怖くてしばらく寝付けなかったが、その後何も起きずにいると安心して寝てしまったらしい。
翌日、私は昨夜寝付けなかったこともあり11時すぎに目が覚めた。
兄はすでに起きていて、寝起きの私にこう言った。
「なぁ、なんか俺のガンプラめちゃめちゃになってんだけど、何かあった?」
私は愕然した。覚えていないのだ。あれだけ興奮していたのに。
さらに兄は続けてこう言い放った。
「もしかして昨日大地震に合う夢見たんだけどホントにあったのかな?」
どうやら兄の脳内では昨日の出来事は夢として補完されてしまっているらしい。
しかし、不自然に固定されたスタンドライトが、バラバラになったフィギュアが、水量の減った水槽が、
昨夜の出来事が事実であることを物語っていた。
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人間の脳というのは不思議なもので、その人物にとって都合の悪い出来事は頭の中で都合のいいように変換してしまうらしい。
霊に関しても然り、霊などいないと思い込んでいる人は、たとえ怖い体験をしても無意識になんでもない出来事や自分とは無関係の出来事に変えてしまう。
それは「夢を見た」という形だけでなく、「誰かに聞いた」とか「自分で作った」という形にもなり得る。
あなたが今宵、百物語のために作ってきた話、本当に「作り話」ですか?
終
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