「怪魚の魚影」1/4
小学生の頃、祖父に連れられてよく釣りに行った。
祖父は別に釣りが趣味というわけではないのだが、
釣り好きな自分の我侭を叶える為、知り合い伝いに色々と
情報を仕入れては、毎度のごとく様々な所へ連れて行ってくれた。
ただ、自分が免許を取る頃にはその当時の記憶も曖昧になってしまい、
昔に行ったあの川や池、沢への道を教えてくれと頼んでも、
ほとんどの場所を忘れてしまい、今となっては再び行くことができないのが残念である。
引用元: ・【8月18日】百物語本スレ【怪宴】
「怪魚の魚影」2/4
ある夏の日、またどこかで話を仕入れてきた祖父に連れられ、釣りに行った。
そこは山奥ではあるのだが、渓流のように早く澄んだ流れの川ではなく、
水は緑がかり、流れはゆったりとし、幅は狭くも、深さのある川だった。
早速釣りを始めたわけだが、かなり魚影が濃く、ほぼ入れ食い状態だったと覚えている。
そのうち小さなハヤを釣るのに飽き、近くの藪でドバミミズを掘り出し、
大物狙いに仕掛けを変えた。
といっても、じっと待つことができず、そのうち水面までエサを持ち上げては、
小魚がミミズを突くのを見て楽しむという遊びに変わった。
幾度と無く場所を変えては、水面にミミズを落とし、魚がそれを突くのを見る。
そんな遊びをしている最中、いかにも大物が潜んでそうな深い淵を見つけた。
岩の上に陣取り、ミミズをたらす。
「怪魚の魚影」3/4
すると、川の淵からヌッと黒く大きな魚影が出てきたかと思うと、
バクッと水面で大きな水しぶきをたてた後、また川の深みへと潜っていった。
一瞬ではあったが、それを見て直ぐに釣りを止め、一目散に祖父の下へ走っていった。
その大きな魚影の話を聞いた祖父は雷魚だ雷魚!と騒いでいたが、そんな祖父に
とにかく早く帰ろうと喚いたのを覚えている。
祖父は面食らったようではあったが、そのまま直ぐに自分を連れて帰ってくれた。
「怪魚の魚影」4/4
あの細長く大きな魚影は今となってもなんだったのかはわからない。
ただ言えるの確実に雷魚ではないこと。そもそもあんなところにいない。
そして、釣りを止めた理由だが、あの魚は水面にいたミミズではなく…
水面に写った俺の顔に喰らいついてきたからである。「完」
りほ ◆aZ4fR7hJwMkさん、ありがとうございました
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せっけん ◆5oOLgQPf6Xttさん、第九十四話をお願いします
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