題:見えない
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昔あったこと
その日の天気はもう覚えていませんが、月は出ていなかったので新月か曇りだったはず
真っ暗な道を、まばらに立つナトリウム灯の明りを頼りに家路を急ぐ
何気なく後ろを見ると、少し離れた街灯の根元に何かがありました
・・・が、オレンジ色の光と、それのある場所が丁度明りの死角なせいもあり、ソレがどんなものかまではわかりませんでした
暫く歩くと、今度は前方の街灯の裏にソレがありました
気にはなったものの、無視して通り過ぎようとしました
遠目には中身の詰まった黒いゴミ袋のように見えたソレは、近くで見てもツヤ消しした黒ゴミ袋でした。中身入りの。
もぞっ
問題はそれが動いていたことです
ゴミ袋のように見えたソレは微かにモゾモゾと動いている
よく見てみるとソレはまるで人がうずくまって手招きを―――
引用元: ・【8月18日】百物語本スレ【怪宴】
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そこまで思い至ったところで腰が抜けそうになりましたが、たたらを踏むだけですみました
もし倒れたら、明りの範囲から出てしまいそうに思えたので・・・
わけがわからない
不思議なのは、気配が薄いこと
ともすれば後ろの闇に紛れてわからなくなってしまうほどに薄い気配
何故気付けたのかわからない程の存在感
コイツは所詮この程度か
驚いたが、怖がることなんか何もない。
さっさと通 り過ぎてまっすぐ進めばいいだけじゃないか
さあ、一歩踏み出して・・・・・・
できない
足が重い
走ればいいのに走れない
ゆっくり歩くことしかできない
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光の中から出てしまった
じりじりとソレが近づいてくるような気がする
・・・○○・・・
友人Aの声で名前を呼ばれた
○○・・・
帰れ
○○?
来るな
○○
それ以上、近づくな…!
○○!
前の暗闇から手を掴まれた
「A?」
本物のAだった
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Aに手を引かれ夜道を走る
どれくらいの距離を走っただろう
我が家の近所の公園についた
なぜあんな所で立っていたか聞かれたが、上手く説明ができず「街灯に…」としか言えない
Aもわけがわからないと言った様子
なぜAがあそこにいたか聞くと、
なんとなく通った方がいい気がして、いつもは通らない道を来たら私に遭遇したという
「Aは凄いよ、アレが危ないものだなんて気付かなかった」
私がそう言うと、Aは怪訝な顔を浮かべながら
「あれ?あれって何だ?」
という
見えなかったのか?アレが?あの暗がりの中ですら見えたのに?
ハッキリ、アレが動くの が・・・?
「お前が憔悴しきった顔でこっちを見るから、とにかくあそこを離れようと思って」
そんなはず…!
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「なあ、」
なら、なら私の見たものは
「○○…」
もういいんだ
頼むから、その先を言わないで
知りたくない、考えたくないから
やめて
「お前は、何を見たんだ」
ゴソッ
地元でまことしやかに噂されてる“ナニカ”
先日里帰りした時聞いたら尾鰭がつくわ脚が生えるわ大変なことになってました
ひょっとしたら
ソレを最初に見て、そういうものにしてしまったのは
ソレを生んでしまったのは
私かもしれません
【了】
黒靴 ◆c6TvSatgXEさん、ありがとうございました
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ガータロー ◆l7Mb16VB82さん、第七十八話をお願いします
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