雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 様 『銃創』
親戚のお爺さんの話。
大戦中、徴兵されて、東南アジアのジャングルで戦っていたのだという。
撤退戦の最中、運悪く足を銃で撃ち抜かれた。
焼き付くような痛みに「やられた!」と思ったが、手を伸ばしてみると何処にも怪我をしていない。
鋭く感じた痛みも、幻のようになくなっていた。
不思議に思いはしたが、四肢の動きに支障はなく、無事に帰国することが出来たのだそうだ。
終戦後、実家で農作業をしていると、いきなり足が激痛に襲われ、血を吹き出した。
病院に担ぎ込まれたところ、どうにも銃創に見えると言って、医者が首を傾げた。
「それにしてもおかしな話だ。
村中の銃や鉄といった物は、すべて供出させられてどこにも無いというのに。
一体、どこの銃で撃たれたんだ?」
お爺さんはその時の銃創だという古傷を見せてくれながら、この話をしてくれた。
「理由はわからないが、あン時撃たれたものだって、儂にはわかったんだよ。
えらく間が開いたモンだが、そのお陰で生きて還ることが出来た訳だ。
コレが無けりゃぁ、お前たちも産まれてきてなかったんだぞ」
話の最後に「生きているっていうのは良いモンだなぁ」と付け加え、カラカラと笑っていた。
そのお爺さん、少し前に鬼籍に入った。
私の子供を抱かせてあげられなかったことが、本当に残念だ。
【了】
引用元: ・【8月18日】百物語本スレ【怪宴】
雷鳥一号◆zE.wmw4nYQさん、ありがとうございました
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黒靴 ◆c6TvSatgXEさん、第七十七話をお願いします
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