ユウ ◆pK2t4W3twQ 様 『夏休み』
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小学校高学年の頃だったかな。
当時の家庭事情がゴタゴタしてて、母方の祖母の家に預けられるコトになったんだ。
言っちゃえば親父の浮気発覚と、母親の体調不良に因る入院が重なったのが理由だけど。
祖母の家は実家から割と近くて幼い頃から何度も遊びに行ったりしてたから、そこで過ごすというのは窮屈には感じなかったかな。
弟が一緒に居たから、っていうのもあるかもしれない。
その弟は預けられる経緯を理解出来なくてわんわん泣いてたっけ。
そんな感じでしばらくの間、生活の拠点が変わったワケで。
通学に関してはギリギリ同じ学区内だったから転校とかはしなくて済んだけど、若干歩く距離が延びたのがキツかったってのは覚えてる。
家の前に長めの登り坂があって、表通りに出るには嫌でもそこを通らないといけなかったしね。
それからどれくらい経ったかな・・・祖母の家での生活も慣れ始めて、普段通りの毎日に近付いたのは。
たまに母親の見舞いに行くくらいで、俺も弟もメンタル的に復調して来てた。
丁度待ちに待った夏休みが間近に迫ってたから、不幸中の幸いってやつだね。
(どうでもいいコトだけど、親父はあの後どこかに行っちゃいました。
失踪って扱いになるのかな・・・ホントどうでもいいけど。)
引用元: ・【8月18日】百物語本スレ【怪宴】
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夏休みはごく普通の子どもらしく、楽しく過ごせたと思う。
同年代の友達と毎日めいっぱい遊び倒す・・・みたいな感じで。
今にして思えば、あの境遇でも大して落ち込まなかったのは友達のおかげなのかな。
今更ながら感謝しないと・・・ねw
で、夏休みも終わりに差し掛かる頃。
残り少ない休日を手付かずの宿題に追われるってのは皆も経験あるんじゃないかな?
俺もそんな切羽詰まった子どもの一人だったワケで。
朝からノートやらプリントやらの束に無駄な怨嗟を発しつつ机に向かってた。
―――と・・・ここで俗に言う「視線を感じる」って言葉があるよね。
何て表現したらいいか判らないけど、あの感じ。
解る人には解ると思うんだけど、肌で感じる感覚的な―――
その日も朝から片っ端からやっつけ続けて、昼過ぎくらいだったはず。
婆ちゃんの家はクーラー無くて扇風機だけだったから、いい加減暑くなったし休憩しようかと思ったのね。
で、ふと感じたんだ・・・・・・視線っていうか気配っていうか。
(あれ?お婆ちゃん遅くなるって言ってたし、弟は今日は友達の家に泊まるって言ってたよな・・・)
急に感じた気配だったから少し逡巡したあと、とりあえず振り返ってみたのね。
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誰も居ない。
いや・・・居た。
正確に言うなら「在った」。
ピンポン玉くらいの二つの眼球が。
頭が眼前のモノを認識した瞬間、それまで感じていた暑さが嘘のように霧散していった。
全体的に赤みを帯びたそれは、ぬめっとした薄気味悪い光沢を放ちながらそこに「在った」。
動けなくてただ見た。
見てはいけないと思いながらも目を離せなかった。
宙に浮いた二つの眼は斜視のように、別々の方向に視線を這わせてた。
どうしよう・・・って考えたのも束の間、片方の眼がこっちを見た瞬間に体が動いた。
いや、ホントは動けたのに「気付かれるから動くな」って、脳がそれを制してた感じかな。
とにかく脱兎の如く玄関まで走って、乱暴にドアを開けて、普段ならキツい登り坂を全力で走って・・・。
半泣きになりながら友達の家に駆け込んだよ。
自分が確かに見たはずのモノ、友達は信じてくれなかったけど、その日は家に戻るのが嫌で泊めてもらった。
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その後は遭遇するコトは無かったけど、婆ちゃんの家では極力一人にならないように過ごしてたっけ。
周りは誰も本気で取り合ってくれる人が居なかったけどね。
今でもアレが何だったのかさっぱり解らないし、何故婆ちゃんの家にあんなモノが現れたのか知る由もない。
でも、絶対に見間違いとかじゃなかった。
もしあの場面で逃げなかったらどうなっていたんだろう・・・。
―――視線を感じても安易に振り向かない方がいいかもね。
見ているのは人間だけとは限らないから・・・。
【了】
ユウ◆pK2t4W3twQさん、ありがとうございました
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憂莉◆BPe4rMCg8kさん、第六十二話をお願いします
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