白 様 「少女」
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深夜の2:30頃。
スタジオリハ上がりだった。
外へ出ると雨が降り始めていて、急いで機材車に乗った。
雨は段々と強くなって、機材車の中で「雨、嫌だなあ」と文句を言っていた。
傘を持っていなかったせいもあったのだが、何となく嫌な雨だったのだ。
メンバーの住むマンションに着く頃には雨足は少々弱まっていた。
メンバーの中で一番に車外に出た僕は、機材を降ろすため車の後ろで他のメンバーが降りてくるのを「嫌な雨だなあ」と濡れながら待っていた。
その時、機材車の前の水溜りに小走りする子どもの足が映って見えた。
機材車の真後ろに立っていた僕には、角度的に見えるはずがない。
かがんで覗いているわけでもないのに、機材車の下から前にある水溜りが見えた、気がした。
「誰かいる?」
僕は足早に機材車の前に回ってみた。
道端に立つ電柱の影に隠れるように、少女がいた。
5歳くらい、髪は三つ編み、白いシャツ、赤いスカート。
そして大き目の熊のぬいぐるみを両手で抱きしめていた。
俯きかげんで表情は見えないが、電柱の影から恥ずかしがるように覗いたり、隠れたりしていた。
「なんでこんな雨降りの深夜に子どもが?」
引用元: ・【8月18日】百物語本スレ【怪宴】
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僕は話しかけるでもなく、少女をしばらく見つめていた。
すると、僕と行き違いに機材車の後ろに回ったメンバーの呼ぶ声がした。
最初に降りた僕が、機材を降ろしに来ないのを不思議に思ったようだった。
ぼくは少女から目を離し、「小さい女の子がいるんだけど、近所の子?」とメンバーに返し、振り返った時には少女はいなくなっていた。
隠れる物陰もない一本道の路地。
不思議だねとメンバーと話して、その夜はそれで明けた。
それから一週間後の夕方6:00頃。
僕は東武東上線で池袋のスタジオに向かう途中だった。
車両内は5~6人の客がまばらに座っているだけ。
ドア傍に座ると揺れが気持ちよく、眠気を誘われウトウトとしていた。
どうやら次は志木駅らしかった。
ガタン!と大きな揺れに目を開けると、眼前に少女の顔があった。
手すりに左手でつかまり、額が着きそうなくらい身を乗り出して覗き込む少女の目があった。
白いシャツ、赤いスカート。
「あの時の子?」
あの雨の夜も、この時も「怖い」という気持ちはなく、ただ金縛り状態ではあったので、仕方なく僕は少女と見つめあっていた。
視界の端に他の乗客が見えたが、何事もないかの様だった。
不意に電車のドアが開いた。
少女はその瞬間に消えた。
ただ座っていただけなのに、ひどく疲労感がした。
「そういや、熊持ってなかったなあ」とぼんやりと思った。
その後、少女には会っていない。
【おわり】
白さん、ありがとうございました
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カリンさん、第四十九話をお願いします
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