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数年前、友人AがB,Cと一緒に登山したときの話
私に話してくれた内容をほとんどそのまま活字化
「お前と知り合う前の話だ。
最初は駄弁ったり歌ったりして意気揚々と歩いてたんだが、ずっとそんな調子だと疲れてしまう
山小屋に辿りついた頃にはクタクタだった
夕方の山小屋には俺たちの他には誰もいなかったよ
日が沈み、木の揺れる音や風の音くらいしか聞こえない山小屋の中で俺達は遅くまでランタンを灯し
お互いの近況や恋の話、猥談、果ては怪談まで語り合った
深夜2時くらいかな
Bが「何か聞こえなかった?」と突然言った。
「バカ、そんな手で怖がらせようったって…」とCが言う
俺も「何かの鳴き声じゃないのか?」と聞くが、「絶対に聞こえた」の一点張り
「本当に声が聞こえたんだ!」
Bが怒鳴り、シーンと静まり返った小屋内
脂汗ってああいう時にかくんだな
直前に話してた怪談が丁度山の話だったこともあって、凍りついた空気の中で外に耳を傾けた。
引用元: ・【8月18日】百物語本スレ【怪宴】
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―ズッ・・・ズッ・・・
声じゃないが、俺には何かを引きずるような音が聞こえた。
「聞こえた・・・」
「だろう?」
Cには何も聞こえなかったらしく、不機嫌そうな顔をしていた
「何かを引きずるような音が聞こえたよ」
「・・・えっ?」
「えっ?」
Bには助けを呼んでいるような声が聞こえたらしい
沈黙が流れる
短気なCが痺れを切らし、「実際に見りゃあ早いだろう! 時間が時間だし、迷子かもしれねえだろ!?」
と言って、武装のつもりか登山杖を持って闇の中に飛び出して行った
俺とBも慌てて追いかけた
直ぐに音の正体は見つかった
俺たちのいた場所と壁を挟んだ反対側、まるで冬山に登る時のような重装備をした男が倒れていた
俺とBが茫然としていると、いつのまにか戻ってきてたCが
「何ボーっとしてんだ! B、110番…じゃなくて無線! A、仰向けに寝かせてやれ!俺は道具をとってくるから!」
そう言って走っていった
とりあえず起こそうと男の肩に触ると、温度が無かった
冷たかったわけでもなく、温かいわけでもなく、何と表現したらいいのかわからない奇妙な感覚
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不思議と、起こして向きを変えることはできた
背負っていた荷物も外せた
荷物も、本体と触った感覚が同じだった
『C!つながらない!』
『うるさい、つながるまで試せ!』
そんな声が小屋から聞こえる中、男が何か言おうとしていた
耳を近づけると、かすれて聞き取りづらい声で「俺も…小屋へ…中へ…」と
俺は男を背負って小屋へ連れて行った
どう考えてもいろんな意味で危険極まりないのに、何故かそうした方がいいと思ったんだ
小屋に入ると2人にステレオでドヤされたが、それを尻目に男を床に寝かせた
2人に叱られていると、後ろから「ありがとう」と、妙にはっきりした声が聞こえた
振り向くと何もなかった
三人して放心して、男を寝かせてあった場所をぼけーっと見ていると朝日が昇ってきた
これでおしまい
俺が一番怖かったのは、“寝損ねた”ことだよ」
【完】
132 :月明 ◆vQGKKdpBnE :2012/08/19(日) 00:01:58.43 ID:zKNb9dnH0三十八本目の蝋燭が消えました・・・
黒靴 ◆c6TvSatgXEさん、ありがとうございました
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合いの手さん、第三十九話をお願いします
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