『不幸の気配』
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うちの長兄がものごころつきはじめた、あるいは目に見えるもの以外について考えはじめたの時のことです。
わたしたち兄妹が通っていた幼稚園の遠足で、イチゴ狩りにいくことになりました。
幼稚園にしてはけっこう本格的なイベントで、幼稚園が私立だったこともありお金がかかっていました。
あさ早くに集合し、貸し切りバスで郊外のフルーツパークまでいくというなかなかの強行軍。
当然体力が持たずに体調を崩す子供もいて、わたしの兄はその一人でした
べつだんこういったイベントが好きなタイプでもなく、イチゴが好きなわけでもなかった兄は
さして途中で帰ることで悲しんだりもしなかったそうです
熱が出たのはそれなりに苦しかったようですが、彼は重度といっていい持病を抱えており
それが悪化した時の苦しみたるや、発熱の比ではなかったので割合気持ちに余裕がありました
母曰く、迎えがきて家に帰るときも周りが心配するのを妙に冷静にみていたとか
しかし家に到着し、三回の寝室に寝かされてから、兄は奇妙な感覚に襲われたというのです
見慣れているどころか、母とよく昼寝をする、幼児にとっていちばん安心できるといって
過言ではないはずのそこで
金縛りにあったわけではありません
おかしなモノを見てしまったわけではありません
何もないところから声がきこえたわけでもありません
一人になった時間を酷く長く体感したというわけでもありません
奇妙な『体験』をしたのではなく、まさに感じ取って,否『感じとらされて』
しまったとでもいいましょうか
引用元: ・【8月18日】百物語本スレ【怪宴】
『不幸の気配』
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本当に全てがいつも通りなのです――しかし兄は
『もう一生幸せになれないんじゃないだろうか』という漠然とした不安に
襲われたのです
怪談もきいたことがない幼子を、そんな気持ちにさせたのは一体なんだったというのでしょう
皆さんは『ハリー・ポッター』シリーズを読まれたことがおありでしょうか?
そのなかに『吸魂鬼(ディメンター)』という妖怪がでてきます
それはその名のとおり、人間の魂を吸い取ってしまう化け物で、具体的には
幸福な気持ちや思い出を吸い取ってしまうというものです
兄が初めて『吸魂鬼』のくだりを読んだとき、まっさきにこのときのことを思い出したそうです
ちなみにわたしや次兄はそんな体験をしたことはなく、その部屋でその後奇妙なこと
が起こったということもありません
しかし、あの瞬間、あの部屋にはなにかがいた、あるいはなにかがなかったのではないかとおもわれます
今はもう人に貸しているおうちですが、小学生の二人のお子さんがいる家庭です
彼らがそんな体験をしていないことを祈ります
お仕舞い
せっけん ◆5oOLgQPf6Xttさん、ありがとうございました
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25 ◆n8k98SYXbkさん、第九十五話をお願いします
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