『職業病』
友人にネイリストをしている女性がいます。
本来の職業は美容師なのだが、ネイルアートが得意で現在はそちらの依頼が入ることが多いと言っていました。
今でこそネイルアートをしている人はあまり多くはないそうですが、
一時期は猫も杓子もネイルアート状態で、休む間もなかったと言っていました。
そんな彼女が、まさにネイルアート絶頂の頃、「休みを取ろう」と思ったできごとがあったそうです。
来る日も来る日も誰かの爪を見て、それを整えて行く仕事。
彼女は心底、嫌気が指していました。
「目が疲れて、肩が凝る。自分のしたいのはこんなことなのかって疑問だった」
そんな疲れを押して出勤したある日のこと。
マネキンにつけられているウィッグがずれているのを見て、それを直そうと手を伸ばしたそうです。
ガリッ
鈍い音がして、手の甲には鋭い痛みが走りました。
慌てて手を引くと、そこには4筋の赤い傷が付いていたそうです。
「何かな、と思ってマネキンを見たらさ」
マネキン側頭部、ウィッグの隙間から薄汚れた手が覗いていたそうです。
「その手、爪に何もつけてなくて、それを見た瞬間に、怖いとかより先に『どうネイルアートを施そうかな?』って考えてた」
手が音もなく消えた後、彼女は仕事を休むことを決意したと言っていました。
【了】
引用元: ・【8月18日】百物語本スレ【怪宴】
KMT ◆nqnJikEPbM.8さん、ありがとうございました
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憂莉 ◆BPe4rMCg8kさん、第九十二話をお願いします
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