鏡◆6CsOFCfHco さん 『父の実家』
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父方の実家は少し有名な観光地にある。
穏やかで、豊かな自然。
疲れを癒しに人々がくるような所。
田舎が嫌で都会へ来た父と父の兄弟。
だけど父は年に一回は家族をつれて祖父母の元へ連れて行ってくれた。
やがて祖父は病死、祖母は独居で10年頑張ったけど認知症になり、父の弟の家へ引き取られた後、施設へ。
父の実家は空き家となった。地元の親戚が時々来て綺麗にしてくれたが、その親戚も亡くなった。
元から父の兄弟達は家を処分しよう、と言っていたが、父だけが反対していた。
父のワガママに付き合う形で、私達が家を管理することになった。
暇な学生の私や父母が年に1~2回、大掃除しに父の実家へ行く。
ある年、そろそろあの家を処分なりした方がいいのかなと父がこぼした。
私と母は密かに旅行気分だったので少しガッカリ。
そしてその夏にまた家族で掃除に行った。
いつもの様に木の棒を持って鍵を開け、蜘蛛の巣を巻き取りながら中へ入っていく。
引用元: ・【8月18日】百物語本スレ【怪宴】
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「ひゃ」
勝手口から入った母の小さな悲鳴が聞こえたのち「ちょっと大変!」叫んだ。
何事かと母の元へ行ってみたら…食卓にホカホカの食事が用意されていた。私と父は呆然。
「ど、泥棒!」やっと私が叫ぶと父がはっとしたように家中の鍵や窓を確認しに行った。
母は警察を呼ばないと!と外へ。
一人残った私はまじまじと食卓を眺めていた。
煮物に味噌汁と白米。質素だけど、私にはとてもおいしそうに見えた。
台所におかれた古い鍋から湯気が出ている。
しばらくして父が家の奥から、携帯でなにやら話しながら台所へ来た。
ばあちゃんから電話、と携帯を渡された。
「もしもし、電話変わったよ。ばあちゃん元気?」努めて明るく聞いたが、
「飯の時間だよ」と言われて固まった。
「飯の時間だよ」もう一度言われた時には携帯をほうりなげてた。
父が慌てて携帯を拾い、また電話するから、と電話を切った。
恐らく真っ青になっているだろう私の顔を見て、父は何も言わなかった。
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食卓には七人分の食事。
大人の食事が六人分、小さな子供一人分。
そのうち警察が来た。金品などはないし、盗まれたものもない。
食事は捨てた。勿体無かった。
父が言うには、父の兄が祖母の施設を訪れた際、私に電話してくれと祖母に頼まれて父に掛けてきたらしい。
父の兄弟は5人。
うち一人は幼児の頃に病気で亡くなっている。祖父母と合わせてちょうど七人。
不法侵入者が偶然に人数分作ったのか…
それともまさか、認知症の祖母が?だとしても何故父に言わず私に伝えたのだろうか。
どのみち、この謎はこのまま迷宮入りになるんだろうと思う。
来週また掃除へ行く。
【了】
鏡◆6CsOFCfHcoさん、ありがとうございました
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憂莉◆BPe4rMCg8kさん、第五十三話をお願いします
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