【洒落怖】百物語・七十一本目 無題:百物語本スレ【怪宴】

百物語2012 怖い話
240 :代理投稿 ◆nqnJikEPbM.8 :2012/08/19(日) 03:41:35.35 ID:jvZ3IDbu0

コッソリ ◆.PiLQRq.0A 様 『無題』
(1/2)

もう二十年近く前の夏の話だ。
その日はちょうど祭りがあって、友達と夜店を回る約束をしていた。
住んでいたところはド田舎だったので祭りの規模は大したことはないが、
夜店が出たり、公然と夜更かしが出来るその日は子供心に楽しみだった。
祭りの会場は、当時住んでいた家から小川を挟んだ向かい側で、会場へ行くには橋を渡るために迂回をする必要があった。
普通に行けば子供の足で徒歩20分程度はかかる距離。家を出たのは午後6時半を少し過ぎた頃。
「このまま普通の道を通って行くと約束の時間に遅れる」そう思ったので、ショートカットをすることにした。

家から祭り会場の方向へ真っ直ぐ進むと古びた水門があった。
その水門の上を渡って川向こうに渡れば半分以下の時間で祭り会場に着ける。
川向こうの友達の家へ遊びに行く時などに使っていたのだが、大人からは「危ない」と禁止されていた。
水門自体の老朽化や全く人が通らないような場所にあるのだから当然のことだと今は思う。

その水門の周囲は全く手入れされていない雑木林で、背丈ほどもあるカヤが辺り一面に生えている。
しかも時間は夕暮れ時。水門の近くに着いた頃には光は周囲の草木に掻き消されて辺りは真っ暗だった。
薄気味悪さもあったが、それ以上に夏特有の湿り気を孕んだ空気や身体に纏わりつく蚊柱が不快だった。
人は来ないと言っても、俺や近所の悪ガキが使うので、獣道のような細い通り道は確保されている。
はびこるカヤを掻き分けるようにして進んで行き、そろそろ水門だな、と思った。

引用元: ・【8月18日】百物語本スレ【怪宴】

241 :代理投稿 ◆nqnJikEPbM.8 :2012/08/19(日) 03:44:38.84 ID:jvZ3IDbu0

(2/2)

蚊柱を避けるために伏せていた顔をふっ、と起こした。
川が流れているので、水門の周りには草木がなく、そこだけポッカリと西日が差し込んでいた。
目線の先にある水門の上、赤茶けたバルブの脇にこちらに背を向けてそいつはしゃがみこんでいた。
一目見た瞬間にそれが生き物だと分かって、同時に「関わっちゃいけない」と思った。
大人が体育座りをしている姿勢だが、腕は肘が地面に付くほどに長い。
折り曲げた腰の上にはでっぷりと肉が乗っていて、段がつくほどに太っている。
肩は異様に細く、ほとんど首と区別がつかない。その上に細長いふくらみがあってそれが頭だと分かった。
西日のせいか全身がオレンジ色に染まっていて、所々に血管のような筋が走っている。

「やらない夫」というAAキャラの腕を倍にして肩を無くし、太らせたら俺が見たあれに似ていると思う。
そいつは時折頭を左右に振るだけでそこから動く気配はなかった。
とてもじゃないが水門を通れたものじゃない。
すぐに帰ろうと思ったが、そういう時は本当に目を逸らせないもので、
じっとそいつの背中を見ながら注意深く後退りを始めた。

今思い出しても吐き気がする
当時はしばらく眠れなかったし、パニックにもなってた。医者の世話にもなった。
そいつは俺が後退りを始めた瞬間に跳ねて四つん這いになってこっちを見た。
目があった。互い違いに4つ。目しか覚えてない。それ以外分からない

俺は叫びながら家に戻ってその場で倒れたらしい。
逃げ出した記憶はなんとなくあるけど、途中のことは覚えてない。
起きたら病院だった。

【了】

242 : 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 ミオ ◆yz7KwCMAoU :2012/08/19(日) 03:45:52.76 ID:t9naPkC70七十一本目の蝋燭が消えました・・・
コッソリ◆.PiLQRq.0Aさん、ありがとうございました
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